本が好きな方の多くはインドア派かも知れませんが、涼しくなって虫も少なくなる秋には野外でのんびり読書を楽しむのも悪くありませんよ。
というか、ハンモックに寝そべって、お気に入りのミステリーやエッセイを読みながらそのまま昼寝してしまう——なんていうのも、気分をリフレッシュするのに最適です。
とはいえ、アウトドアの知識や技術はそう簡単には身につけられないので、気分だけでもアウトドアの雰囲気にひたれる本をご紹介しましょう。
釣りに関するおすすめの本
『フライ・フィッシング—英国式釣り師の心得』 エドワード・グレイ著 西園寺公一訳
日本で一番メジャーなアウトドアといえば釣りです。釣りに関する本や情報は山ほどあって今更という感じが強いので、身のまわりにやっている人が少ないフライフィッシングはいかがでしょうか。
情報自体が少ない上に、昔の英国紳士のたしなみというイメージもありますし、インドア派なのに渓流でフライロッドを振る——なんていうのはギャップもあってカッコいい(かも)。
まあ、日本の稽古事はたいてい形(型)を覚えることから始まりますし、アウトドアで形から入るというのも意外に早い上達につながったりします。
この本はフライフィッシングの入門書として最適。マスやサケを毛ばりで釣る楽しみと醍醐味、さらに使う道具について開設があり、エッセイとしても味わいながら読める文章で紹介されています。
冒頭の「趣味について」で、「残念ながら、われわれが自分の心に感じる素晴らしい楽しさを他人に伝えることほどむずかしいことはない」と述べた上で、「自分の趣味については控えめであるべきだ。どこでそれを語るにしても、語る喜びを大切な宝物のように扱い、いくら催促されても、全部をとことんまでさらけ出すべきではない」としつつ、「釣りなどについて本を書くなら、説教になってはならないし、他人をその道に引き込む下心や独断もよろしくない」といった調子です。
日本によくある「かしましい」(自慢たらたらの)本や動画とは一味も二味も違います。
とはいえ、実際にやってみようと思えば、具体的で実践的な情報も必要ですよね。
『フライの雑誌 122(2021夏号)』
日本語で手に入る実用的なフライフィッシングの本を一通りチェックしたのですが、「どうだ、オレ、アウトドアの達人だぜ、カッコいいだろ」と自己満足してる感が強くて、、、どれもこれもオジサンの説教くさいんですよね。なぜなんでしょうね? エドワード・グレイの爪の垢でも煎じて飲んでほしいくらい。
で、見つけたのがこの雑誌、しかも数年前の(!)。
特集が「はじめてのフライフィッシング」で、読んでみると、基礎知識を一通り押さえてあるし、よくまとまっています。とりあえずこれ一冊あればなんとかなるかなという本(雑誌)。
こういう専門誌の常で、大手では見かけない業界の広告が多いんですが、こういうニッチというかマイナーな遊びでは広告も貴重な情報源になるんですよね。2025年夏現在も、ネットで購入できるようです。
『完訳 釣魚大全』 アイザック・ウォルトン著 森秀人訳
釣りとくれば、この本は欠かせませんね。英国の川釣りのあれこれが網羅されています。
海釣りが主流の日本では、釣りの本というより「古典文学」的な扱いですが、釣り師のバイブルともいえる名著。訳文も現代的で読みやすいです。
全体の構成としては、釣り師が道連れになった猟師や鷹匠と互いの得意分野について歩きながら意見交換し、前半の途中からは猟師が釣り師に教えを受けるという形で話が進んでいきます。
十七世紀(江戸時代の初めの頃)に刊行された本なので、釣り道具に関してはあまり参考にはならないでしょうが(自分で毛ばりを作らなくても買える時代なので)、川にすむ魚やエサになる虫などの生態はあまり変化していませんし、なるほどと思わせられる記述も多いです。
それよりも確かな教養に裏打ちされた文章の魅力が大きいですね。釣りに興味のない人でも、良質のエッセイとして十分に楽しめます。
キャンプを楽しむための本
『焚き火の本』 猪野正哉著
キャンプで一番の楽しみは焚き火という人も多いのではないでしょうか。
テントやその張り方は製品によってさまざまですし、傘みたいにワンタッチで自動的に展開するものもあるので、本よりは製品についている説明書を読むのが一番。料理についても普段からレンチン派でなければ問題なし——というわけで、キャンプまわりで最も技術というかコツが必要なのは焚き火でしょうね。
以前なら焚き火だけで本が一冊できる(採算がとれるほど売れる)とは思えませんでしたが、それだけキャンプが一般に浸透しているということなんでしょう。
炎はたえず姿を変えるので、長く見つめていても見飽きないですし、ぱちぱちする音は聞こえたりしますが、花火のような派手で刺激的な音はたてないので、普段は考えごとをしない人でもつい物思いにふけってしまう——という面もあります。
日常から離れて自分を見つめ直すには一番かもしれませんね。
『決定版 キャンプレシピ大全』 ソトレシピ編
アウトドアで楽しめるレシピが250以上。
バーベキュー用のコンロでも焚き火でも、また調理道具としてはダッチオーブンやホットサンドメーカーでも、キャンプで使えそうなあらゆるタイプの道具に合わせた料理のレシピが用意されています。
野外で作れるものは自宅では(火を起こす手間も不要なので)もっと簡単にできたりするし、こういう本を一冊持っておくと、キャンプに行かない普段の生活でも役に立ちます。
アウトドアの料理というと、豪快な男の料理というイメージがまだあるかもしれませんが、そういうのは見た目が派手なだけで、食材費もかさむし無駄になって捨てるゴミも多いですよね。
もうそういう時代はすぎました。地味だけど、「簡単にできて、まあまあいけるね」路線がおすすめです。コンビニで買ったおにぎりでも山や海で食べると美味しいですから。
トレッキングで心身ともにリフレッシュ
『歩くを楽しむ、自然を味わう フラット登山』 佐々木俊尚著
健康のためにウォーキングしてる人は多いですね。散歩とウォーキングの違いは歩く速度と姿勢にあるようですが、そのウォーキングの延長上にあるのがトレッキングです。この本ではフラット登山と呼ばれています。
呼び方は人によってさまざまで、別の呼び方だとハイキングやワンダーフォーゲルなどがそれに近いでしょうか。オリエンテーリングから競技性を抜いたものという言い方もできるかもしれません。
「疲れすぎているなら、休日は森の中を歩こう」というコンセプトで、それがこれでもかこれでもかというくらい(400ページにもわたって)紹介されています。「歩くを楽しむ、自然を味わう」がサブタイトル。
百名山踏破なんて大上段に構えなくても、これだと気軽に始められますよね。
ウォーキングはごく普通の住宅地や遊歩道のある公園、河川敷など平地で行いますが、トレッキングは自然が豊かな野山で起伏があったりするコースを歩きます。が、登山というほど過激ではありません。
「必ずしも高い山脈に行く必要はない。山頂に立たなくたって構わない。歩いて気持ち良い道だったら平原や森の中にもたくさん存在している」
本格的な登山をしている人からは鼻で笑われるかもしれませんが、「そんな定義はどうでもいい、とにかく気持ち良く歩きたいのだ」という本です。
どうです、手にとってみたくなりませんか。ついでに近場を歩いてしまいましょう。
『日帰り山さんぽ 低山をきわめる』(旅の手帖MOOK)
こちらは山登りではあるんですが、トレッキングに近い、首都圏から日帰りで行ける標高千メートル以下の山に限定したガイドブックです。
山頂に立たなくてもいいと言われても、歩くことを続けていると、体力も自信もついてくるし、やはり頂上に立ちたいって気になること、ありますよね。
とはいえ、百名山には三千メートル級の山岳も含まれていますし、近頃はクマの出没や被害がニュースで取り上げられることも多い――というわけで、本格的な登山はちょっとという人にはこちらがおすすめ。この本は首都圏が対象ですが、各地方の低山のルートについても地元の新聞社などから似たような本が出ているようです。
『ペン1本から始める 日常スケッチ 暮らしを描く・残す・飾る(コツがわかる本!) すずきじゅんこ著
限りなく散歩に近いトレッキングや低山歩きでも、思わず見とれてしまう景色ってありますよね。そういうとき、普通はスマホで写真を撮るわけですが、それを自分の手で描いてみるというのも新しい楽しみを増やすことにつながるかもしれません。
大人のスケッチや水彩画の入門書は多いのですが、これはペン1本から始める日常のスケッチ。小さな手帖(可能ならばスケッチブック)とペンだけで始められます。メモするように、その場でさっと描けるというのがいいですよね。



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