
ネイチャー・エッセイの名手
レイチェル・カーソンと言えば、環境保護のバイブルとでもいうべき「沈黙の春」で知られています。日本の教科書に取り上げられたりもしたので、ご存知の方も多いでしょう。
とはいえ、実は彼女の作家としての最良の資質は、自然界についてのネイチャーエッセイとでもいうべき、こうした本に現れているのです。
科学者としての訓練を受けた専門家として、感情や情緒に流されず、自然のあれこれについて淡々と語りながら、それでいて自然界のダイナミックな姿をいきいきと表現するのが抜群にうまい人です。
この「われらをめぐる海」は、タイトルが示すように、地球の表面の七割を占める海について、その成り立ちから、北極海から南極海に至るまで、ダイナミックに流れている海流の動きや、気象に与える影響、といったマクロなものから、浅い海で見られる海藻やプランクトンなどの生態や役割といった、ミクロの世界に至るまで、目に浮かぶように描いています。
目次
目次を見てみましょう。
第一部が「母なる海」
1. 海の起源
2. 表面のすがた
3. 移りゆく年
4. 太陽のない海
5. 隠れた国々
6. 永い雪降り
7. 島の誕生
8. 古代の海のすがた
第二部が「休みなき海」
9. 風と水
10. 風、太陽、自転する地球
11. 動く潮汐
そして最後に「人とまわりの海」で、
12。 地球の温度調節
13。 塩の海の幸
14。 めぐる海
となっています。
専門知識がなくても読みやすい
この本は、全米図書賞をはじめとして数々の賞を受賞し、しかもベストセラーにもなっています。ベストセラーということは、専門知識がなくても読みやすいということでもあります。
近年の科学、特に宇宙物理学の進展はめざましく、地球や宇宙の起源についての情報もどんどん新しいもので書き換えられています。
その意味では、この本に書かれている、地球ができた頃、についての情報には、古くなっている部分もあるのですが、これはやむを得ません。そのあたりは割り引いて読んでください。ロミオとジュリエットの物語だって、今みたいにスマホがあったら成立しませんから。
現代の科学は専門化が進み、いわばタコ壺のように、それぞれ細分化されていて、科学者でも自分の専門以外はわからなかったりします。そのため、鳥の目で俯瞰するように、その全体像をとらえて表現している、こういう本は、とても貴重だともいえます。
文庫でも出ていますが、図書館にもあると思います。興味を持った方は探してみてください。もし見つからなければ、そういう本を探すというゲームの楽しみがまだ残っていることになるので、むしろラッキーかもしれません。



コメント