人間が作り出した最も人間が生み出した最も機能的で美しい乗り物の一つ 帆船の世界

海・川の冒険

帆船といえば、今では映画やアニメで大活躍の海賊たちの乗り物というイメージでしょうか。

マストや帆の形状は多岐にわたり、無数のロープ類が張り巡らされていて、非常に複雑に見えますが、これこそ機能を追求してたどり着いた究極の美と呼ぶ人もいます。

今回は、そういう、人間が生み出した最も美しい乗り物の一つである帆船についての本をご紹介しましょう

さまざまな帆船の世界

まずはビジュアルから――見ているだけで楽しい帆船の画集・写真集

世界帆船画集: 波濤を越えて

東喜三郎著

ISBN 9784425953714

ティークリッパーとしてあまりにも有名な快速帆船カティサークや、信仰の自由を求めた清教徒たちをイギリスからアメリカへ運んだ伝説のメイフラワーなど、百一隻の帆船が描かれています。

コーヒーやアルコールを片手に帆船の絵を眺めていると、日常のささいなことを忘れて顔がほころんできますよ。

残念なのは、紙質が他の美術書に比べると少し落ちるところでしょうか。

すでに絶版ですが、入手はネット経由で比較的容易です。

世界の帆船博物館: 上田毅八郎画集

上田毅八郎著

ISBN 9784885918414

上田毅八郎は海洋画家。140もの帆船の絵が収録されています。

帆船博物館と銘打っているだけに、あまり知られていない最古の帆船なども紹介されています。

模型で有名なタミヤのプラモデルの箱の絵(ボックスアート)を数多く描いた画家としても知られています。

前記の画集とほぼ同時期の出版(2000年代)ですが、こちらもすでに絶版。古本としては価格がやや高めです。

世界の帆船: ビーケン家所蔵の写真集

フランク・ウィリアム・ビーケン (写真)、石井健、加藤泰孝訳

練習船からレーシングヨット、豪華なチャーターヨットまで、百点もの世界各国の帆船の写真集。

フランク・ウィリアム・ビーケンは英国の写真家。

彼の撮影したヨットの写真は非常に洗練されていて美しく、もうアートと呼ぶしかありません。

人類の歩みと帆船のたどってきた歴史

帆船がどういうものかのイメージがつかめたら、その歴史をたどってみましょう。

『航海の歴史:探検・海戦・貿易の四千年史』

ブライアン・レイヴァリ著、千葉喜久枝訳
ISBN 9784422202372

カラーの図版や写真が豊富で、物語を読むように、海洋史の知識が深まっていく本。

古代から現在に至るまでの人類の航海の歴史が多彩な切り口で紹介され、アカデミックでありながら読みやすい本。

15世紀半ばまでの「最初の航海者たち」から、16世紀の探検の時代、大航海の時代を経て19世紀に至る「帝国の時代」、さらには蒸気船や移民、20世紀の世界大戦における開戦へと続いていきます。

こちらも絶版ですが、入手は可能です。

『帆船物語』

滝沢昌二著
ISBN 9784908086229

アフリカで誕生後、世界をひろげてきた人類の壮大な旅路――グレートジャーニーとも呼ばれる――その旅を、陸路ではなく、海をわたる手段としての船の発達を通して見た本。

学校で習うことのない発見が次から次へと──

紀元前三千年、モンゴール系の稲作民族が台湾からフィリピン、インドネシア、マレー半島へと、カヌー(刳りぬきの丸木舟)で南方の海にわたっていきます。

このオーストロネシア(南島)語族は紀元前千五百年にミクロネシアへ、さらに紀元前九百年にはメラネシアをへてポリネシアに達し、西暦十世紀にはハワイへ、十一世紀にはイースター島、十三世紀にはニュージーランドへと達します。その過程でカヌーは大型化し、双胴船が誕生し、クラブクロゥと呼ばれる帆はさらに進化し、人間がつくりだした最も美しい乗り物といわれる大型帆船へとつながっていくのです。

帆船の航海記

乗り物といえば、やっぱり乗ってみなくてはというわけで、いよいよ航海記のご紹介。

『帆船航海記』

リチャード・H.デーナー著 千葉宗雄訳
ISBN 9784303627027

帆船の航海記とくれば、欧米でまず挙げられるのがこの本。

見習い水夫の若者がボストンからカリフォルニアに向かうブリッグ型帆船(商船)に乗り込んで、メキシコでの交易や嵐と遭遇した経験を通して成長していく様子がつづられた回想記。

当時のリアルな船乗りの生活が描かれています。

ちなみに、大型の船では船長や航海士などの高級船員の船室は船尾側にあり、甲板で実際に作業する水夫をはじめとする実際に帆の操作を担当するクルーの船室は船の前部にあります。それが原題の “Two years before mast” (マストの前の二年間)の由来です。

『海のロマンス 練習帆船大成丸の世界周航記』

米窪太刀雄著 海洋冒険文庫編
ISBN 9784908086168

明治という時代、日本がまだ新興国とみなされていた頃の商船学校の学生たちによる練習帆船・大成丸での世界一周。

太平洋を横断して米国サンディエゴへ、さらに南米最南端のホーン岬をまわり、アフリカ大陸の喜望峰、ナポレオンが流罪になったセントヘレナ島訪問やリオ・デ・ジャネイロ滞在を経て、インド洋を横断して帰国するまでの、総航海距離3万6377海里、465日に及ぶ航海の記録。

太平洋横断後の船長の失踪と航海士の不慮の死、赤道の暑さやスコール、南大西洋の大しけ、練習生二名の死亡など、数々の試練に見舞われながらも、訪問先の風俗や社会の状況などをユーモアや自嘲、諧謔(かいぎゃく)をまじえて独特の文章でつづった、日本人による帆船航海記の名著。

長らく入手困難な幻の本でしたが、読みやすい現代表記で復活。

『小さな帆船、大きな世界: 大阪市帆船「あこがれ」世界一周航海記』

ISBN 9784807213351

前二著はいずれも古典とされる本ですが、こちらは20世紀最後の年に世界周航に出発した、現代日本の帆船航海記です。

一般の人々を対象に体験航海としてのセイルトレーニングを行うために運航されている大阪市所有のセイルトレーニング用帆船──その帆船「あこがれ」による261日に及ぶ航海。

クルー達のさまざまな体験や感動に満ちています。

帆船について、さらに深掘りするための本

まずは、基本となる知識を得るために

『帆船』(万有ガイド・シリーズ)

Attilio Cucari著、茂在寅男監修、

監修者は日本の航海術の権威ともいうべき存在。

説明も図もわかりやすく、帆船に関係する全般について過不足なく説明されているので、この本だけでいっぱしの帆船通になれます。

この監修者が執筆した『古代日本の航海術』もおすすめ。

『帆船 その艤装と航海』

杉浦昭典著

こちらは帆船に関する決定版ともいうべき書籍ですが、残念ながら、すでに絶版になっています(こればっかり……)。

図書館や古書店で探すしかありませんが、簡単に手に入らない本を探すというのも読書にともなう楽しみの一つですよ。

艦船模型の世界

帆船の本というと、全体に発行年が古いものが中心にならざるをえず申し訳ないのですが、こういうマニアックでありつつも奥の深い世界を知ってしまうと、もう人生に退屈することはないでしょう。

趣味としての帆船模型は、鉄道模型と並んで、模型製作の王道ではないでしょうか。

というわけで、

『帆船模型: 製作テクニック』

草野和郎著
ISBN 9784303600044

帆船模型製作のベテランによる、製作テクニックの図解。

船板一枚から自分で削り出すという、とんでもなくハイレベルの方もいらっしゃいますが、模型のキットとして売られているものを組み立てるだけでも、なかなかに難易度が高い帆船模型の世界。

こういう本は大いに参考になるのではないでしょうか。

『帆船模型製作技法』

白井一信著
ISBN 9784835449227

木製帆船模型同好会「ザ・ロープ」創立30周年記念として出版された本。

技法だけでなく、模型の製作に必要な実際の帆船の構造などについても解説されています。

キットを購入する帆船模型の初心者から、キットにさらに手を加えたり、一から自作する上級者まで、幅広い層が対象の本。

『帆船軍艦 (輪切り図鑑クロスセクション 2)』

リチャード・プラット著、スティーブン・ビースティー (イラスト)、宮坂宏美訳
ISBN 9784751530429

船の構造を細密画で徹底して図解した図鑑。

輪切りにされているのはイギリス海軍の帆船軍艦ですが、マストを支えるロープの貼り方とか乗員の配置や生活空間とか、写真や絵を見るだけではわからない内部の詳細がわかるので、一から模型を作る人の参考になるだけでなく、眺めているだけでも「へえ」とか「ほう」とか、いろいろな発見があるおもしろい本です。

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