まだまだ暑いですね。
夏に怪談もいいんですが、暑い日には思わず身震いするほど寒い世界での冒険譚にひたるのはいかがでしょうか。
『北極圏一万二千キロ』 植村直己著
グリーンランドは北米大陸の北東部にある世界最大の島(デンマーク領)。このグリーンランドを犬ぞりで縦断した記録。
植村直己といえば、エベレストやアコンカグアなど五大陸の最高峰すべてに登頂し、北極点にも到達した、日本のというよりは世界でも屈指の冒険家の一人。著書も多く、『青春を山に賭けて』や『極北に駆ける』などの方が有名ですが、一冊選ぶとなったらこれ。
極地を旅するとなったら荷物を運ぶ手段として犬ぞりは必須。その犬ぞりの技術習得のため、先住民族の集落に住み込んで、現地の人々と同じ家に暮らし、同じ服を着て、同じモノを食べることで、犬をめぐる文化を追体験し自分のものとした上で、冒険に出発します。
そうした彼の真摯な姿勢と資質が最もよく表れているのがこの本。
『エベレスト初登頂』 ジョン・ハント著、吉田薫訳
ニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリーとシェルパのテンジンが世界で初めてエベレスト登頂に成功したときの遠征隊長ジョン・ハントによる記録。
個人が主流の現代とは異なり、当時、大人数の遠征隊を組織し、酸素ボンベなど物資の運搬を分担しながらベースキャンプを設置、徐々に高度をあげて拠点を確保する一方で、隊員の高度順応をはかりつつ人数を絞っていき、最後に精鋭のアタック隊が頂上に立つという極地法が主流でした。
地形や気象の変化、隊員の健康状態など多岐にわたる情報を把握しつつ、大きな名誉を手にすることになる登頂者を誰にするかの判断を下すのが遠征隊長で、その成否は彼の決断にかかっていたともいえます。
最後の登頂の場面は読み応えがありますよ。
『笑ってよ、北極点』 和泉雅子著
番組のレポーターとして訪れた極地方。その魅力にとりつかれた女優の奮闘記――というには、あまりにも過酷な北極点をめざす旅。
一度目は挫折。四年後に再度挑戦し、やっと北極点へ。
そりを使うとはいえ、GPSはむろん存在せず、整備された道路があるわけもない。至る所で氷の障害物や嵐に行く手をはばまれる。チームの不協和音にも気を配りつつ、六十二日間の旅もついに……
今年逝去した元女優で冒険家の、体力・知力・才能にめぐまれているとは決して言えない、ごく「普通の女性(?)」の大冒険――その等身大の記録。
『アムンゼンとスコット』 本多勝一著
二〇世紀の初頭、各国は極点到達を競い合っていました。北極点は米国隊が先着。ノルウェーのアムンゼン隊は目標を南極に変更します。イギリスのスコット隊もほぼ同時期に南極点を目指していました。
このアムンゼンとスコットそれぞれのチームの進捗状況が、同時進行でドキュメント風に展開されていきます。
食料など荷物の運搬に馬を使うか犬を使うかで明暗がわかれ、一方は栄光に包まれ、他方は南極点に到達したものの失意の帰路で全滅するという悲劇に見舞われます。
アムンゼンにしてもスコットにしても、それぞれの遠征について文学的な感動を呼ぶ本は他にも数多いのですが、栄光と挫折という、非常にわかりやすいテーマを、予備知識のない読者にもわかりやすくまとめた本。
『荒野へ』 ジョン・クラカワー著、佐宗鈴夫訳
アラスカの人里離れた荒野で放棄されていたバス。その中で、一人の青年の遺体が発見されます。この本は、その若者がなぜその場所にやってきて死んでいったのかを探ったノンフィクション。
冒険の書というよりは、自分の生き方を模索して放浪していた若者が、どうやって廃バスの中で暮らすようになったのか、どういう思いでそういう生き方を選択し、死んでいったのかを――その二年間の経緯を――残された日記などを手がかりに探っていきます。
大学を卒業後、家族と連絡を絶ち、お金は寄付し、アメリカ西部からヒッチハイクでカナダを通り抜け、さらに北にあるアラスカへ。持ち物はライフルとカメラと食用植物のガイド本。
狩猟採集の生活が三ヶ月ほど続いた後、急に体調を崩して死に至りますが、本書刊行後の調査で、死因は毒性の植物を食べたことにあると判明。
実話に基づくノンフィクションで、映画化もされています。



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